多次元尺度構成法(MDS:Multidimensional scaling)について

分析の例

複数の対象をどのように認識しているのか,基本的な観点は共通してあるものの,回答者の属性タイプごとに,何をより重視するかといったことに違いがある,そんな場合について見てみます.ここでは,アンケートの回答によって得られた複数の設問に対する回答から,10の尺度得点を計算し,この10の尺度得点について,集団ごとの傾向の違いを見ていきます.

インターネットの利用頻度の高/低と,インターネット上で行うアンケートに参加するために自らメールアドレスを記入した/記入しなかった(未記入)かどうかから,859人の回答者全体を下記4つの集団に分けます.

この4つの集団ごとに,「社会的外向性」「共感性」「進取性」「持久性」「自己顕示性」「攻撃性」「非協調性」「劣等感」「神経質」「虚構性」の10の尺度得点間の非類似度(距離)を計算します.こうして計算した4つの非類似度行列は以下の通り.上から順にインターネット「低」・アドレス「未記入」群,インターネット「低」・アドレス「記入」群,インターネット「高」・アドレス「未記入」群,インターネット「高」・アドレス「記入」群,の4つの行列が得られます.


このデータを順序尺度とみなして個人差モデルを適用してみます.6〜2次元について計算した時のstressは以下の通り.あまり肘がはっきりしませんが,個人ごとのあてはまりがあまりばらつかないことも考慮し,ここでは4次元の解を見てみます.


4次元の解について,対象の座標と個人の重みは以下の通り.


次元1×次元2について(次元1が横軸,次元2が縦軸),まず対象について見ると,2次元は基本的に「虚構性」を他と分けるような性格が目立ちます.対極は「神経質」.2次元目は「生真面目さ」といったところでしょうか.1次元ではプラスに「虚構性」や「非協調性」「劣等感」などが位置し,マイナスに「社会的外向性」や「共感性」が位置します.1次元目は「非協調性」を表すような次元のようです.


これらの次元に対する個人の重みを見ると,ネット利用「低」・アドレス「記入」群が他より1軸を重視しているようです.確かにインターネットをあまり使っていないのに,インターネットのアンケートに協力するからと自らのアドレスを記入する群は,やや一貫性に欠けており,「生真面目さ」より「非協調性」が目立つとしても不思議はありません.ただ,そうした傾向は他の属性と比べてさほど顕著というわけでもなさそうです.


次元3×次元4について,まず対象の布置を見ると,3次元のプラス方向に「社会的外向性」とともに,今度は「攻撃性」が位置しています.マイナスには「劣等感」が位置しており,3次元目には「積極性」を表すような性格がみられます.4次元目は「進取性」や「自己顕示性」は低く,「持久性」や「神経質」が高い値をとっています.紋切型で「保守的」な傾向をあらわしているような印象です.


これらの次元に対する個人の重みを見ると,いずれもこれらの次元に対する重みは大きくないようです.そのなかで,アドレス「記入」のほうが次元3すなわち「積極性」をより重視し,アドレス「未記入」のほうが次元4すなわち「保守的」をより重視する,という傾向は理解できます.ネット利用については,それが「低」の群にくらべて「高」の群はこれらの次元に対する重みはより小さくなっています.


どの次元でもあまり解釈上関心がない「虚構性」がある程度大きな座標値をとってしまいました.あるいはこれは対象から除外したほうが分かりやすい結果が見えたかもしれません.またここでは個人に集団を使いました.集団ごとに大きさ(その集団に属する人数)が違う点は結果に好ましくない影響があったかもしれません.

納品物サンプル

納品物サンプル(excel2010ファイル)(excel2003ファイル)

ご注意ください

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